シンガポールのプロベート(プロベイト/Probate)フロー

    

    



シンガポールに財産や債務を有する人が亡くなった場合、相続する方はそれを自由に処分することはできず、プロベート(プロベイト/Probate)という手続きを経て清算し、残った財産が相続人に分配されます。

財産と債務を清算する手続きのことを、海外では「プロベート(プロベイト/ Probate)」と呼びます。一般的には下記の手順で行い、複数の国に財産・債務がある場合は国ごとに行います。

亡くなった方が遺書を残しており、遺言執行人が指定されている場合と、そうでない場合により手続きが異なります。

遺言に記載されている、遺言執行者と相続人を確認

遺言執行者は、必要書類を添え裁判所に遺言を執行する権限の付与申立てを行う

・ 遺産執行者は、相続人の指示を受けながら、財産・債務の清算を進める

・ 換金したものは、プロベイト用口座に入金

財産・債務を処分するにあたり発生する税金や費用があれば、遺産執行者が支払を行う

原則として、全ての財産・債務が処分された後、遺産執行者は裁判所に報告し、相続人の指示に従い、残余財産を送金


 遺言書が作成されていない場合、もしくは作成されていてもその中で遺言執行者が指定されていない場合は、裁判所に対し、遺産を管理する遺産管理人の申し立て(Letter of Administration)を行います。遺産管理人(Administrator)は裁判所が任命しますが、その優先順位は法律で下記のように定められています。


〈既婚の場合の優先順位〉① 配偶者、②子供、の順位
〈独身の場合の優先順位〉① 親、② 兄弟姉妹、の順位


遺産管理人には、亡くなった方の債権者や、裁判所が適当と認められる者が任命される場合もあります。

遺産管理人は通常一名が選任されますが、相続人の中に21歳未満の人がいる場合は遺産管理人を2名以上もしくはトラストコーポレーションを選任する必要があります。また、相続人の中に21歳未満の人がいる場合や遺産額が25万シンガポールドルを超える場合、遺産管理人は2名の保証人と担保を提出しなければなりません。

遺産管理人の任命後の手続きは、(遺言ありの場合)の③以降と同様になります。

必要書類の煩雑さや遺産管理人の決定に時間がかかることを考慮すると、シンガポールに財産・債務を有する方は予め遺言書を準備しておかれることをお勧めいたします。

 

          

シンガポールのプロベート手続きに際し、裁判所に提出する書類には下記のようなものがあります。

遺言書
•宣誓供述書(Affidavit)
•死亡証明書
•結婚証明書、出生証明書
•財産一覧表、財産評価証明書
•故人が外国籍の場合には、相続人の範囲等を説明した外国弁護士による法律意見書

書類が日本語などで作成されている場合は、その翻訳文を認証したものを一緒に提出します。

各書類は現地の弁護士などの専門家のサポートを得て準備することになりますが、財産一覧表は、故人の死亡日現在のシンガポールにおける資産・債務だけでなく、シンガポール国外にある財産等も記載することが義務付けられていますのでその情報を専門家に提供する必要があります。

〈財産一覧表への記載事例〉
•不動産
•動産:預金、証券、債権、保険、車両、貴金属など
•債務:借入のほか、不動産に設定されている抵当権など

財産にはその時価総額も記載する必要があります。

尚、シンガポールにはCPF(Central Provident Fund)という社会保障制度があり、個人の積立制度となっています。CPFはシンガポールで就労する外国人も納付していますが、亡くなった時に故人のCPF積立金の権利を付与する人を予め指名している場合、その使命された人はプロベート手続きを経ることなくその権利を受け取ることができます。




シンガポールでは相続税は2008年以降、廃止されています。プロベート(プロベイト/ Probate)で財産や債務を清算する際、不動産や株式の譲渡などがある場合には「印紙税(Stamp Duty)」が課されます。裁判所や遺産管理人、弁護士など専門家への報酬等もプロベート終了時に精算される費用になります。

不動産や株式の譲渡にかかる印紙税の概要は下記のとおりです。

事 由 税 率
シンガポール法人の株式譲渡 譲渡価額と株式価値のいずれか高い方の 0.2
住宅用不動産の譲渡 (売却者)不動産の取得時期により異なる0~16%の従価税率
(取得者)最高税率4%に加え、最高20%の加算印紙税
工業用不動産の譲渡 取得後 3 年以内の短期売却に最高税率15
不動産賃貸 平均年間賃貸料(AAR)に契約年数を乗じた金額の 0.4
(契約年数が 4 年を越える場合には 4 年として計算)

プロベイトは、シンガポールのほか、マレーシア、香港、アメリカ、イギリス、オーストラリアなどでも採用されています。

相続財産・債務の内容にもよりますが、事前の備えがないと一年以上の長期戦になり、日本の相続税の申告期限に間に合わないこともあります。海外に財産を保有する方は、事前のプランニングは重要です。




信託(Trust)とは財産やビジネスを承継させる仕組みの一つで、遺言書や委任状と同じように、相続に対して生前にできる対応の一つです。本人が保有する財産を生前に信託(Trust)に譲渡し、財産の所有権が信託に移行することで本人の財産とは切り離され、信託を管理する受託者(Trustee)によって財産が管理されることになります。プロベートなどを回避することができることが大きなメリットです。

信託の基本的な仕組みは、信託を設定する信託者(Settlor)が自身の財産の管理を受託者(Trustee)に委託し、同時に財産から生じた利益が受益者(Beneficiary)にもたらされるようアレンジするものです。信託の対象は、不動産や現金、ビジネス、有形・無形資産など様々な財産を設定することができます。

メリットとしては、プロベートなどを回避することができるほか、生前から相続計画を実行することができる、受託者が財産の法的所有者となるため、債権者や破産、その他のリスク(離婚による財産争いなど)から財産を保護することができる、などがあります。

 

デメリットとしては、信託の設定には綿密な相続計画や譲渡時の税金等を考慮する必要があるため、設定・維持にコストがかかること、などがあります。シンガポールでは、信託財産の保有・管理のみを目的として設立される私益信託会社(Private Trust Company) を利用することでコストを抑える方法も活用されています。