マレーシアのプロベート(プロベイト/Probate)フロー

    

    



マレーシアに財産や債務を有する人が亡くなった場合、相続する方はそれを自由に処分することはできず、プロベート(プロベイト/Probate)という手続きを経て清算し、残った財産が相続人に分配されます。

財産と債務を清算する手続きのことを、海外では「プロベート(プロベイト/ Probate)」と呼びます。一般的には下記の手順で行い、複数の国に財産・債務がある場合は国ごとに行います。

 
・亡くなった人がマレーシアに保有する財産・債務を、相続人に代わり清算し、分配する一連の手続きを行う人を「遺産管理人」と呼ぶ

・「遺産管理人」は遺言に指定されている、もしくは相続人が現地の弁護士などに依頼する場合が多い

・遺産管理人は、裁判所にプロベート手続きの権利付与を申請し承認を得る
遺言に記載されている、もしくは日本の家族(法定相続人)

・日本にいる相続人が、マレーシアの遺産管理人に委任する場合、委任状を作成する。委任状には法定相続人全員が署名する

・委任状を日本語で作成している場合、通常は英語に翻訳し、日本において公証手続き(下記参照)を行う
・ 遺産管理人は、相続人の指示を受けながら、財産・債務の清算を進める

・遺産管理人は、プロベート専用の口座をマレーシアに開設し、換金したものは順次口座に入金していく

・売却や換金がすぐにできない財産は、相続人等への名義変更手続きを行う

・原則として、清算が完了するまでは相続人が換金された資金の一部を利用・処分することはできない
・財産・債務を処分するにあたり発生する税金や費用があれば、遺産管理人が支払を行う

・マレーシアでは、原則として資産等の譲渡益(キャピタルゲイン)に対しては、不動産等にかかるものを除き課税されない

・印紙税は、不動産や株式の譲渡に関し作成する契約書等に対して課税される
・原則として、全ての財産・債務が処分された後、遺産管理人は裁判所に報告を行い、残余財産を相続人の指示に従い送金する

・遺産管理人が現地の弁護士である場合、弁護士の費用も送金前に精算し、差し引かれる

・ 財産・債務の内容にもよるが、通常、プロベイト手続きは半年~一年程度かかり、中には長期化する場合もある
 


プロベイトは、マレーシアのほか、シンガポール、香港、アメリカ、イギリス、オーストラリアなどでも採用されています。
相続財産・債務の内容にもよりますが、事前の備えがないと一年以上の長期戦になり、日本の相続税の申告期限に間に合わないこともあります。海外に財産を保有する方は、事前のプランニングは重要です。

 

          

マレーシアでは日本の印鑑のようなものはなく、書類には署名(サイン)を行います。
「公証手続き」とは、本人が間違いなく署名したことを、公的機関で真正証明(認証)してもらうものです。日本にいる相続人が、マレーシアの遺産管理人にプロベイト手続きを委任する場合などに必要です。

公証の流れはは以下のとおりです。

公証人は、面前で署名する人が本人であることを確認する(パスポートや運転免許書など)
署名者は公証人の前で署名する
公証人は、本人が署名したことを確認する印を押したうえで署名を行う

相続人であることを証明するためには戸籍謄本などの提出を求められる場合があり、提出に際しては、英訳などその国の言語に翻訳する必要がありますが、この場合は「記載内容(翻訳)の真正」が必要となる場合があります。日本でこの公証を行うためには、まず、外務省で公印確認を受けた後、在日の外国大使館(在日マレーシア大使館)で公証を受けることになります。


主な財産の清算手続きは下記のように行われます。

財産の種類 手続きとポイント
現地法人とその株式
・子会社等(非上場株式)の場合、承継先を検討し、株式譲渡手続きを行う
・承継にあたっては、マレーシアの外資規制や会社法を考慮する
・所要期間は、3ヶ月以上。すぐに結論を出せない場合は、いったん相続人に譲渡するケースも
預金口座
・裁判所からの許可等を銀行に提出し、プロベイト用口座への入金を指示
・所要期間は、3ヶ月以上
不動産
・売却する場合、不動産エージェントなどに依頼 。
・売却に時間がかかる場合、プロベート手続きがその分延びる要因に
・相続人に名義変更する場合、関連省庁への申請を経ることになり、所要期間は6ヶ月以上
動産・その他の資産
・不動産と同様、売却か相続かにより手続きを行う
・車の場合、売却・名義変更ともに、陸運局での手続などが必要になり、煩雑

原則として、手続きが完了するまでの間、換金された資金の一部を相続人が利用することはできず、日本での相続税の納税などのため、やむを得ず一部送金しなくてはならない場合、裁判所の許可が必要になります。

プロベートの過程で財産を処分する場合にマレーシア側で発生する税金には下記のようなものがあります。

1.不動産譲渡益税(Real Property Gains Tax:RPGT)

マレーシアの不動産等を譲渡した場合、不動産譲渡益税の対象となります。

税の対象:
  • 土地、建物、建造物、またはそれらに付されている権利等の譲渡益
  • 資産の大半が不動産であるとみなされるような会社(不動産主体会社)の株式を売却した場合の株式譲渡益
税率(2020年1月1日以降):
免税:
下記の場合において、免税枠が設けられています。
  • 個人の場合、10,000リンギもしくは譲渡益の10%のいずれか大きい額まで免税
  • マレーシア人、永住者が居住用の不動産を譲渡した場合、生涯で一度限り免税
  • 故人の不動産をその家族(配偶者、親子、祖父母、孫)が相続する場合、実質免税
譲渡益の計算方法:
① 課税対象譲渡益 = 譲渡価格 ― 取得価格 + 付随費用
② ① – 控除額(上記cの10,000リンギもしくは譲渡益の10%のいずれか大きい額
③ ② x 税率

 
納税方法: 〈買い手〉
買い手は譲渡対価の3%を源泉徴収のうえ、譲渡日から60日以内に税務署に売買契約書を合わせて申告、納付します。売り手が外国人または外国法人である場合、源泉徴収は譲渡対価の7%になります。売り手が免税適用を行う場合で、その申告書を売り手より入手した場合には源泉徴収の必要はありません。


〈売り手〉
譲渡日から60日以内に税務署に申告および納付を行います。免税適用を受ける場合は、申告書と合わせて免税をサポートする書類を提出します。

 
不動産主体会社の株式譲渡: 会社資産の大半が不動産であるとみなされるような会社(不動産主体会社)の株式を売却した場合の株式譲渡益は不動産譲渡益税の対象になります。
  • 会社の有形資産の75%以上が不動産等で構成されている
  • 会社が50名以下の株主により保有され、かつ5名以下の取締役等によって支配されている
グループ再編等に伴う株式譲渡と認められる場合、免税を適用することが可能です。適用には事前の免税申請が必要です。

 

2.印紙税(Stamp Duty)

印紙税は、不動産や株式の譲渡に関し作成する契約書等に対して課税されるもので、課税対象となる文書に印紙税が納付されていない場合、その文書は法的に有効ではありません。

税率 : 〈不動産の譲渡〉


〈株式の譲渡〉

株式の売買価額もしくは評価額のいずれか大きい額に対し、税率0.3%
評価額は、下記①~③のうち最も高い額となります。
① 売買価格
② 株価収益率法(PER法)による評価額
③ 株式の額面

 
免税: 一方が他方の会社に90%以上出資しているような関連会社間での資産の譲渡にかかる印紙税は下記の要件を満たせば免税となります。
・ グループ再編等に伴う関係会社間での資産譲渡
・ 譲受人がマレーシア企業であること
・ 譲渡資産は譲渡日より3年間は処分しないものとし、当該資本関係も譲渡日より3年間は維持する

 
納付方法: 印紙税は、作成された文書の日付もしくはマレーシア国外で作成された場合はマレーシアで受領してから30日以内に納付します。
ペナルティ: 納付期限に遅延して納付した場合、遅延の期間によりペナルティ率が異なり、最大で6ヶ月の遅延の場合、100リンギまたは200%のいずれか高い方のペナルティ額となります。